らら・カフェ 2020夏号(第51号)/ 2020年6月
若者たちが集う場に…夢のワイナリー作戦
ふるさとの誇りと、復興への思いを胸に
100%ハンドメイドのクラフトワインを
〝木幡の幡まつり〟で知られる二本松市東和地区。そののどかな山里に、男の夢とロマン溢れるワイナリーがあるのをご存じですか。「ふくしま農家の夢ワイン」―10年前、8人のおやじたちが、かつて養蚕で栄えたふるさとの活性化を夢見て立ち上げた小さなクラフトワイナリーです。しかし、その夢に立ちはだかったのが、東日本大震災と原発事故。おやじたちはそれでも諦めず、成功を胸に秘めて突き進みました。振り返れば、苦労もいつしか懐かしい思い出に変わっていました。
「もう一度人生に花を咲かせたい」… この熱き思いがあればこそ、おやじたちの夢は叶ったのです。
今回は、ワインづくりに人生の花道をかけた斎藤誠治社長(70歳)に、夢あり笑いあり… 男のロマンを実現させたお話を伺いました。
――JR東日本のクルーズトレイン「四季島」で、ここのワインが提供されているそうですね。どんな経緯で採用されたのですか?
斎藤:「四季島」は2017年5月の運行開始でしたが、前の年にインターネットを見て興味を持ったというスタッフ4、5人が訪ねてきたんです。私が説明をしてワインを試飲してもらったところ、採用したいと言われました。立ち上げたばかりの小さなワイナリーで作ったワインが「四季島」で飲んでもらえる… 嬉しかったですね。
――この場所は、以前からブドウの栽培は盛んだったのですか?
斎藤:東和地区といえば、昔は生糸の生産が盛んなところで、このあたりは殆どが桑畑でした。最盛期には日本有数の生糸生産量を誇っていましたが、その後輸入生糸に押されて廃業する養蚕農家が続出し、あっという間に畑は山に戻ってしまったんです。若者は外に出ていき、この地域もご多分に漏れず高齢化が進んでいます。
――そこで、斎藤社長が立ち上がった。何とかしなければ…と。
斎藤:震災前まで、「東和やまぶき会」という60代以上のおやじたちが集まる会があり、地域の活性化やこれからの夢などを話し合っていました。時には好きなどぶろくを酌み交わしながら(笑)。会員は20人くらい。ある時、地域活性化のために「どぶろく特区」(どぶろくの製造免許)を取得して販売すっか…という話になったんですが、特区には自分の土地で作ったものを自分の店で販売するきまりがあり、たまたま友達と食事処(のんびり東和)をやっていた私がその条件に当てはまったというわけ。そこで私が言ったのは、「地域の活性化なら若者が来る場所にしなくちゃダメだ。どぶろくでは若者は集まらねぇ。農家の嫁不足解消のためにも、若い女性をターゲットにしたワインがいい… 格好よくグラスを回して飲むワインにすっぺ」…と。それで、みんなもそれに賛同したというのが始まりです(笑)。