らら・カフェ 2016冬号(第37号)/ 2016年12月
スポーツを通して、支援を必要としている人にチャンスを与えたい
「私は、子どものころは何一つ自信の持てるものはありませんでした。そんな時に「走る」チャンスに出会い、懸命にがんばることで生きる希望と勇気、そして多くの感動と出会いに恵まれました…」と話す有森裕子さん。20年前のバルセロナオリンピックで銀、続くアトランタオリンピックで銅メダルという輝かしい経歴で知られたマラソンランナーです。
その有森さんが代表を務めるのが、NPO法人「ハート・オブ・ゴールド」―「スポーツを通じて、国境・人種・ハンデキャップを乗り越え、希望と勇気の共有を実現しようと活動している。
1996年12月、アンコールワット国際ハーフマラソンに招待選手として参加した有森さん。そこで巡りあったのが世界最悪の地雷汚染国で苦しむカンボジアの人々でした。繰り返される内戦、戦闘の結果、放置された地雷によって今も多くの犠牲者が出ているというカンボジア。マラソンは、対人地雷の廃絶、被害者の社会復帰と自立支援を目的に開催を始めた。参加者は年々増加しており、21回目となる今年は、85カ国9150人がスタートラインに並んだ。
有森さんは、このマラソン出場をきっかけに、2年後の1998年、スポーツNGO「ハート・オブ・ゴールド」を設立。そこには、個人レベルではなく組織として社会貢献を続けたいという有森さんの強い思いがあった。
「できる人が」「できる事を」「できるだけ続けよう」が合言葉のハート・オブ・ゴールド。代表の有森さんはじめ、全国621件(個人586名、法人35団体)の会員がその活動に携わっている。毎年開催されるアンコールワット国際ハーフマラソンでは会場の安全対策など運営面の応援のほか、有森さん自身も参加しながら義足ランナーや車いすで走る人々を励ます。さらに、被災地や紛争地で苦境に苦しむ人々が自ら希望や勇気を持って生活できるよう、自立に向けた子どもたちへの教育支援や障がい者スポーツ支援も行っている。有森代表が、子どものころに「走ること」で生きる希望をつかんだように、それは、言葉では伝えられない様々な思いが詰まった活動としてカンボジアや日本国内で展開されている。
ニューチャイルドケアセンターは、カンボジアのエイズ孤児や農村において行き場を失った子どもたちに教育や職業訓練を行い、社会人として自立できるよう支援す る施設。極貧で生死をさまよう子どもたちをセンターが受け入れることで、命の安全と病気への対応、基本的な教育が施される。