「献上桃の郷」として、
世界一の桃を全国に

らら・カフェ 2021秋号(第56号)/ 2021年9月

全国有数の桃の生産地である福島県北地域は、毎年7月下旬から8月上旬にかけて出荷の最盛期を迎える。伊達郡桑折町では、毎年皇室に献上する桃の郷としてブランド化を進め、平成28年には『献上桃の郷』という商標の登録も認められた。  
また東京オリンピックでは、福島市のあづま球場で開催されたアメリカのソフトボールチームの監督が、インターネットで福島の桃のおいしさを発信したことで、大きな話題にもなった。
東日本大震災では大きな風評被害を受けた福島県産の桃だが、現在の状況やこれからについて、桑折町にある伊達果実農業協同組合の後藤信弘さんに話をうかがった。

 「組合の事務所の前に直売所があるのですが、桃のシーズンになると大勢のお客様が並ばれています。多い時には100人以上、仙台方面からのお客様も多くいらっしゃるようです。その日の桃の入荷量によっては買うことができない場合もあります。なるべく多くの方にお求めいただけるよう、一人1箱までに制限しても売り切れてしまうほどです。
 今の直売所は東日本大震災の前年、平成22年に建てました。一般の方への直売は平成18年ごろから始めたのですが、特に宣伝をしたわけではないのですが、口コミでどんどん広がり、お客様が増えていきました。
 このまま右肩上がりで出荷量も売上も増えていけば、と考えていた時に震災が発生し、それ以降は出荷量がじりじりと減少している状況です。」
 後藤さんは今も風評被害は残っていると感じている。
 「震災後、桃の木の除染を行いましたが、樹皮に放射性物質が残っている可能性もあることから、古い木を新しい木に入れ替える『改植事業』も進めています。福島県では毎年出荷前に、全部の畑の桃のサンプルについて放射能検査を行っており、これまでも規制値を超える桃が見つかったことはありませんが、それでも福島の場合は検査をやり続けないとなりません。
 いくら検査で安全性が確認できたとしても、福島県産は買わないという方もいますし。でもそれはもう仕方ないと思います。」
売上が減少している理由は、市場での価格の下落に問題があると後藤さんは考えている。
 「全国的にも桃の出荷量は少なくなってきたことで、1個あたりの単価は上がっているのですが、総額ではやはり減少しています。そして震災前は、山梨産の桃が一番値段が高く、次に福島産が続いていたのですが、震災後は山梨産の次に長野、山形がきて、福島は4番目になってしまいました。
 小売店の皆さんは福島産の桃を高く評価しているのですが、店頭に陳列すると消費者の方から、福島産を置いていることへのクレームもあるそうです。それで店頭にはなかなか置けないと。とても残念なことですが。




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