国道6号から見た風景

らら・カフェ 2014冬号(第29号)/ 2014年11月

国道6号から見た風景の写真

▲富岡第一中学校の入り口には、復興を力強く誓う文字が残されている。

東日本大震災と福島第一原発事故の発生後、福島県の浜通り地方では、大動脈である国道6号の通行規制が行われていたが、平成26年9月15日の午前0時を以って、その規制が解除され、全線での通行がおよそ3年半ぶりに可能となった。


 規制が解除されたのは、富岡町から双葉町までの約14㎞の区間で、国道6号と常磐自動車道常磐富岡インターチェンジとも接続された。ただし、通行は自動車に限定され、オートバイや自転車、徒歩での通行は現在も認められていない。
 規制解除から二ヶ月余りが経過し、今後はさらに除染作業が進むほか、物流や住民の帰還に向けた活動に、一層の弾みがつくことが期待されているが、間もなく震災から4年を迎えようとしている今、復興がどの程度進んでいるのかを現地で実際に確かめてきた。


中ノ作漁港から四倉まで

 今回はいわき市から国道6号に沿って、車で北上しながら南相馬市を目指した。国道6号の規制解除区間では、原則として駐停車が禁止されているため、ほぼ移動しながら車窓から撮影した。

 最初に立ち寄った中ノ作漁港は、津波による被害が甚大だった。沖合の防波堤と、港の周辺では引き続き護岸工事が続いていたが、岸壁の修復は既に終えている様子であった。天気に恵まれたこともあり、穏やかな海が広がる中で釣りを楽しむ人の姿も見られるなど、思わず津波の恐ろしさを忘れるほど静かで美しい風景だった。 沿岸部の道路を通りながら四倉地区に向かう途中には、震災後に建てられたであろう新しい住宅が多数見られる一方、津波の被害を受けた家屋が、まだいくつか残されていた。しかしそうした場所でもガレキなどは撤去され、地面も整地されていて、いつでも再開発が可能な状態となっていた。
 道の駅「よつくら港」では、関東圏のほか宮城ナンバーの車も見られるなど、多くの客で賑わっていた。塩屋崎灯台には観光バスも止まっており、いわき市周辺の観光地では、今回の国道6号再開通によるプラスの効果が出てきているものと思われる。


Jヴィレッジ、そして富岡町へ

 津波の後に火災が発生したことで、さらに被害が大きくなった久之浜地区。久之浜第一小学校の敷地内にある「浜風商店街」は、久之浜の復興を目指す地元商工会が中心となり、震災から半年後の9月にオープンした。全国各地から復興を支援する個人や団体が訪れており、商店街の各所に応援メッセージが残されている。現在も11の店舗と事務所が、ここで営業を続けており、町の人々の憩いの場にもなっている。


 広野町と楢葉町にまたがる、日本サッカー協会の選手強化施設「Jヴィレッジ」は、現在も福島第一原発での事故収束作業を行うための拠点となっている。トラックやバンなどの車が目立つほか、観光バスを借り上げ、原発とJヴィレッジ間で作業員のピストン輸送が続けられている。
 この辺りまで来ると、もう観光客の姿はない。崩れた自宅の屋根のそばで、片付けをしているお年寄りが一人。時折すれ違う工事関係者の車以外は人の気配がない。
 楢葉町周辺では、除染によって出た放射能汚染土の一時保管場所も多く見られ、積みあげられた黒いシートの山の数に、今後の最終処分地の決定という課題解決の難しさを思わずにはいられない。  国道6号の通行規制により、3年半あまり一般の立入りが制限されていたJR常磐線富岡駅周辺では、津波被害が生々しく残されたままとなっていた。駅前地区は「避難指示解除準備区域」に指定されているが、住民の姿は全く見られなかった。車両通行の妨げとなるガレキこそ取り除かれているが、本格的な復興活動はまだこれからという印象を受けた。・・・

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