秋山庄太郎記念
第11回 花見山フォトコンテスト 講評

 株式会社第一印刷では、福島の桃源郷「花見山」の美しさを多くの方々に知ってもらうことで、福島の地域活性化、写真文化に寄与する事が出来ればと、秋山庄太郎写真芸術館様、福島県写真連盟様をはじめとする皆様のご協力のもと、「花見山フォトコンテスト」を開催して参りました。
 毎年、「花見山」を始めとし、福島県内各地の風景や四季折々の自然の美しさを捉えた作品がたくさん寄せられ、本年も福島県内のみならず全国各地から514点の作品が集まりました。皆さまから寄せられた作品一点一点に福島への思いが込めらたこれらの作品を通じて、福島の美しさや福島の魅力を感じていただければ幸いと存じます。




秋山庄太郎写真芸術館 館長 上野正人
 秋山庄太郎存命中から、毎年のように花見山を訪れてきましたが、今春は、来ることができなかったので、たくさんの応募作品を通して、どんな花見山であったのか、雰囲気を感じることができました。入選・入賞作のなかにも、一見するとこれまでの受賞作と切り口が似ているようなところが感じられるものがあることは否めませんが、ご自分なりに大切にしている花見山の印象を心に刻みながら丁寧に撮影していらっしゃるのだろうと思いました。いずれにしても、「花見山」を代表する写真として、多くの方々に喜んでご覧いただけるにちがいないと思う作品を選ばせていただきました。

秋山庄太郎写真芸術協会 副理事長 / 株式会社秋山写真工房 常務取締役 髙辻謙正
 最初にこのコンテストの審査をしたときの作品との違いを非常に感じました。
 「ふるさと部門」に関しては、上手くなっているけれども、熱量が下がっている印象を持ちました。
 「花見山部門」は、切り口が少し変わってきていると思いました。「熱量」はともかくとして、「うまさ」を感じました。
 その年その年で、コンテストのあり方は異なるのだと思います。私が最初に審査を担当したのは震災の直後で、復興の最中だったので、多くの人に、何か「ふるさとというものを表現しよう」という思いがあったのでしょう。復興が進み、だんだんと周囲の環境がよくなってくると、また違うものが生まれてくることを感じ、審査を担当して、とても勉強になりました。
 来年も楽しみに、審査ができればいいと思います。

福島県写真連盟 会長 鴫原明寿
 「ふるさと」とは何かという概念は、それぞれ個人が持っているものがあるので、皆の意見で一つの作品にまとまろうとしても、むずかしいものがあると、毎年思っています。今年も、同じ思いを感じました。
 原発事故以来6年目ですが、浜通りの「ふるさと」の作品がもう少しほしかったと思います。応募作品としてはあるのですが、入選に値するものが少なかったのが残念です。
 記録(写真)には、記憶を思い起こさせる力があります。今回、入選したとかしなかったとかではなく、今撮っておいた写真が、その人の思いが、別な形で記憶を蘇らせるものになってくる作品が多数ありました。上位に入賞した作品のほかにも、審査員が推す作品は、倍以上あり、すばらしいコンテストであったと思います。

福島民報社 編集局 写真報道部長 猪俣広視
 昨年に続いて、2回目の審査に参加しました。
 昨年以上に、独自の視点や切り口で、自分なりの「ふるさと感(観)」を表現した作品が多かったように思います。その中でも今回は、「へえ、こんなのがあるんだ」という驚きを受ける作品が目立ちました。そういった写真を中心に選びました。
 ともすれば抽象的な概念の「ふるさと」を、写真という作品にするには、独自の工夫というか、「どうすれば多くの人に伝えられるか」を突き詰めて、自分なりの努力で作品にしたものが、上位に選ばれたように思います。
 福島の「ふるさと」の良さを全国に伝えようとする写真を審査することで、福島には、魅力的な風景や風物や人、そういうものがまだまだたくさんあるのだなと改めて実感しました。
 来年は、さらに面白い、さらに驚かされるような作品が増えることを期待しています。

福島民友新聞社 編集局報道部 写真課長 矢内靖史
 ふるさと部門の上位三点が偶然、水辺の写真となりました。水というのは自然環境を象徴するものです。福島県の場合、未だに原発事故の風評に悩まされているわけですが、そんな中で、「川」「沼」の写真が選ばれたということは、福島県が復活していくという希望を感じさせてくれる作品が選ばれたのではないかと思います。
 「ふるさと賞」は、子供達が川の畔で遊んでいる写真です。県外の人には、福島県はまだ、「家族連れなどが外でピクニックをしたりは、できないのではないか」と思われている節もあります。そういうものを払拭する意味も含めて「最優秀」に値すると思いました。
 ふるさとの概念は、人それぞれだとは思いますが、ふるさとに対する思い入れが作品にどれだけ込められているか、という点では、全体的にやや少なかったのではないかと思います。
 裏磐梯等の有名な、あるいは荘厳な、風景写真などが多くありましたが、それらは、県外の人から見れば「美しい大自然のふるさと」というイメージになるかもしれませんが、その人なりの「自分の中のふるさと」というものもあると思います。
ふるさとの祭やちょっとしたスナップなど、もっと人間がたくさん登場してくれたら、全体に見ごたえのあるコンテストになったのではないかと思います。来年以降、そういった写真が増えていくことを期待しています。